この記事にたどり着いたあなたは、自身のメンタル疾患と戦っている、または大切な人の支えになりたいと強く願っている方ではないでしょうか。
私自身も双極性障害に深く悩み、何とか病気と共存できるように日々努力しています。
- 気分の浮き沈みが激しく、何度もうつ病を発症している
- 自分の過去の言動を思い出し、いつも後悔してしまう
- 気分が不安定なのは、病気のせいか人格の問題か分からない
- 一向に良くなる気配がなく、自暴自棄になってしまう
このように感じることはありませんか?
メンタル疾患は「甘え」や「人格の問題」だと捉える人は多いですが、双極性障害は正真正銘「脳の障害」です。
脳は感情や思考に関わる臓器なので、周囲の人やあなた自身が病気を認識しづらいのは当然の結果だと言えるでしょう。
本記事では私の体験談を踏まえて、「双極性障害はなぜ理解されないのか」、「双極性障害の特徴」、「病状を安定させるポイント」について解説していきます。
「双極性障害を何とかしたい、理解したい」と想っている方は、ぜひ最後までお読みください。
双極性障害はなぜ理解されないのか
双極性障害は、医療現場でも判断が難しいと言われる病気です。
海外では、うつ状態で病院に来ている患者のうち、20~30%が双極性障害であると言われています。*¹
日本でも始めは「うつ病」と診断されるケースが多く、私も双極性障害と診断されるまで約5年かかりました。
*¹順天堂大学医学部「双極性障害とは」(https://www.juntendo-molecular-psychiatry.com/bipolar/)
双極性障害について
双極性障害にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型は躁と、うつのギャップが大きく、躁状態が長く続く傾向があります。
Ⅱ型は軽度の躁状態と、長いうつ状態を繰り返すのが特徴です。
特にⅡ型は重いうつ状態の再発を繰り返すため、社会生活が安定しづらく、自殺リスクも高い厄介な病気です。
ちなみに、私はⅡ型と診断されているので、本記事ではⅡ型の体験談がメインになります。
理解されない理由
双極性障害が理解されない最大の原因は「躁状態」にあります。
一般に、躁状態時は気分が高揚して意欲的になる、など自分では「体調がよい状態」と思ってしまうことが多々あります。
周囲から見ると、明らかに別人のように感じられることもありますが、本人は気が付きません。
さらに、病院で診察を受けるときは「うつ状態」であることが多いため、医師も「躁状態」を認識しづらくなるのです。
基本的に「うつ病」と「双極性障害」では薬の種類が違います。
そのため「うつ病」の薬が処方されると症状が悪化してしまうことがあります。
また双極性障害の「うつ状態」は、非常につらく苦しい状態が続くにもかかわらず、何とか自力で行動できるために、周囲から「甘え」や「人格」の問題と誤解されることも。
つまり双極性障害が理解されない理由は、本人も周囲も「躁状態を認識できていないため」だと言えるでしょう。
患者自身は「躁状態が本来の自分」だと思いがちですが、「フラットな状態こそ本来の自分」なのです。
自分が経験した主な症状
この章では私の体験談をメインに、実際の症状を解説します。
少しでも、あなたの参考になれば幸いです。
躁状態の症状
双極性障害Ⅰ型と比べⅡ型の躁状態は、比較的軽度なことが多いです。
そのため自身で躁状態を自覚するのが難しいですが、躁状態時の行動には注意する必要があります。
気分の波にのまれてしまうと、その反動でうつ状態時の病状が悪化しやすくなってしてしまいます。
私が躁状態時に感じる症状は次の通りです。
- やる気に満ち溢れ、行動的になる
- 病気が治ったと思い、自己判断で診察や薬の服用をやめてしまう
- 新しいこと、やりたくなったことに次々手を出す
- 良くも悪くも多弁になり、周囲の人を傷つけても気にしなくなる
- 睡眠時間が少なくても平気で活動できる
次はうつ状態の症状について見ていきましょう。
うつ状態の特徴
双極性障害Ⅱ型は、うつ状態の期間が長く続く特徴があります。
躁状態の期間に比べ、うつ状態の期間は約3倍長いと言われています。
非常に苦しいうつ状態時に、私が感じる症状は次の通りです。
- 疲れやすく、無気力になる
- 投げやりな気持ちになり、希死念慮を抱きやすい
- 躁状態時の言動を何度も思い出し、深く後悔する
- 躁状態時の言動により、人間関係が悪くなっていることに気が付く
- 新しいことに手を出し過ぎたせいで、続かなくなりパンクしてしまう
- ちょっとしたことで落ち込みやすくなり、一日中布団から出られないことがある
うつ状態時は自身のエネルギー容量が極端に少なくなっているため、1日のペース配分を考える必要があります。
つらかったこと
メンタル疾患になると苦しい、つらいと感じる場面がとても多くなります。
この章では、当事者として私が特につらいと感じたことを、共有できたらと思います。
人間関係が壊れてしまう
あなたの周囲に、気分の波が大きい人がいたら近寄りがたいと思いませんか?
双極性障害は気分に波がある病気なので、躁状態時は活発でも、うつ状態時はいつも通りに振舞えないことが多々あります。
そのため周囲からは、「やる気がない」「怠け癖がある」「人を振り回さないでほしい」などと思われることがあります。
また躁状態時に、過激な発言をして周囲の人を傷つけてしまうことがあり、友人など親しい人が離れていってしまうことも。
さらに悪いことに、人間関係が壊れてしまった代償は、うつ状態になった時「孤独になる」「誰も助けてくれない」といった形で現れます。
誰かに支えてほしい時に限って、孤独を感じてしまうのは本当につらいです。
人格を否定される
健常者の方にとって、メンタル疾患は「人格の問題」と感じることが多いようです。
なぜなら私自身、長年にわたり「人格否定」をされてきたからです。
自分なりに一生懸命やっていても、「やる気がないなら帰れ」「努力が感じられない」「その性格を直せ」などと叱咤されます。
中でも一番ショックだったのは当時の主治医に、「いつまでもいじけてちゃダメだよ!」「自分の将来は自分で決めてください!」と言われたことです。
当時は心療内科に通っていて、「うつ病」と診断されてから約2年が経過していました(今は別の病院の精神科に通っています)。
薬は欠かさず飲み続けていましたが、症状は改善せず、仕事を続けるのが苦しくなったため、先生に相談した矢先に言われた言葉です。
うつ症状がひどく、先生の助言が欲しくて「今の仕事を辞めるべきでしょうか?」と尋ねたのですが、厳しい言葉で一蹴されてしまいました。
味方であるはずの先生に、怒鳴るように声を張り上げて言われたのは非常にショックでした。
うつ状態のつらさを理解してもらえない
うつ病については広く認知されるようになり、メンタル疾患=うつ病をイメージする人が多いのではないでしょうか。
うつ病の症状として、無気力、体が動かない、社会生活が送れない、などがあります。
一方、双極性障害は躁とうつの期間を繰り返すことや、うつ状態であっても何とか社会生活が可能なため、「気分屋なだけ」と誤解されやすいのです。
双極性障害のうつ状態は本当につらく苦しいものですが、医師でも判断が難しい病気を一般人、ましてや健常者の方が理解するには多くの時間と深い愛情がなければ難しいでしょう。
実際に私も、両親や家族に理解してもらえず、「こっちまで気分が滅入るから落ち込むな」と言われたこともあります。
双極性障害の治療が難しい理由
双極性障害の治療が難しい理由は、大きく4つあるように思います。
- 双極性障害と診断すること自体が難しい
- 自身が病気であることを受け入れ、病気について理解を深めるまで時間がかかる
- 躁状態時に治ったと思い、自分の判断で薬をやめてしまう
- 病状を安定させるには、投薬だけでなく自分の努力も必要になる
双極性障害はそもそも診断が難しく、双極性障害と認定されるまで年単位の時間がかかることもしばしば見られます。
また自分が双極性障害であることを認め、病気と向き合えるようになるには、多くの時間が必要になるでしょう。
医師の方がyoutubeなどで発信していますが、双極性障害の患者さんは薬を飲まない、または自己判断でやめる人が多いのだそうです。
双極性障害はメンタル疾患の中でも薬が効きやすく、欠かさず飲んでいればかなり症状を改善できるとされています。
そして最も難しいのが、双極性障害の治療には患者自身の努力も必要になる点です。
双極性障害の治療は、再発防止が基本となります。
そのためには投薬だけでなく自身の生活リズムを整える必要があり、病気の知識、自分の体調の把握、前向きな気持ち、などが必要になります。
躁状態時に「自分の体調」を把握することと、うつ状態時に「前向きな気持ち」を持ち続けることは本当に難しいです。
病気との付き合い方
この章では、私が実践していることや主治医から受けたアドバイスをまとめて、解説していきます。
あなたや大切な人が、少しでも穏やかに過ごせる「きっかけ」になれば幸いです。
最も重要なこと
まずは、毎日欠かさず薬を飲み続けることから始めましょう。
双極性障害には、投薬治療が非常に効果的です。
基本的にメンタル疾患の薬は、飲み始めてから効き目が出るまで約3か月かかります。
患者にとっては1秒でも早くつらい症状を改善したいところですが、双極性障害に有効な薬は「血中濃度」が基準値に達すると効果が出始めます。
薬の血中濃度を一定に保つ必要があるので、飲んだり飲まなかったり、多く飲めば良い、というものではありません。
また双極性障害では「薬の調整」が重要で、定期的に診察を受け、今飲んでいる薬が患者に合っているか確かめる必要があります。
病状に応じて薬が増えたり減ったりするので、欠かさず薬を飲み、定期的に診察を受けましょう。
気分安定への3ステップ
安定して薬を飲めるようになったら、少しだけ前向きに考えられるようになるはずです。
少しだけ前向きな気持ちが持てたなら、次の3ステップを試してみてください。
- 1日約7時間、睡眠の時間を確保する
- 今の病状を改善する方法について、主治医に相談する
- 必ず達成できるレベルにハードルを下げて、主治医のアドバイスを実践する
①睡眠時間の確保
メンタル疾患を安定させる、一番良い方法は「睡眠」です。
十分な睡眠は、感情の整理、ストレス発散、疲労回復、免疫力増加などの効果があり、睡眠時間の確保は治療の基本と言えます。
②主治医に相談
睡眠時間を確保できるようになったら、自身の躁状態時とうつ状態時の症状やつらさ、などを主治医に相談しましょう。
多くの場合、主治医の先生はあなたが「治したい」と言ってくるのを待っています。
なぜなら「他人は変えられない」からです。
しかし「変わりたいと思っている人」を変えることはできます。
精神科医はメンタル疾患のプロです。
あなたの病状や性格に合わせて、最適な解決策を提案してくれるでしょう。
ただし、一気に治るのではなく、段階的に良くなるためのアドバイスだと思って聞いていただきたいと思います。
③アドバイスを実行
最後に、主治医にアドバイスをもらったら「絶対に達成できるレベル」までハードルを下げてからスタートしましょう。
例えば「朝起きたら10分散歩してね」と言われたら、「朝起きたら窓辺で2分〜3分日光浴する」などハードルをとにかく下げることです。
「毎日3分の日光浴」ができるようになったら、「朝起きたら服に着替えて日光浴」。
その次は「朝起きたら着替えて外に出る」、その次は「朝起きたら2分〜3分散歩する」。
といった具合に、少しずつできることを増やしていきましょう。
「できなかったこと」より、「今日できたこと」を数えましょう。
治療法は、十人十色です。
効果を実感できない方は、こちらの記事を参考にどうぞ。「あなたの悩みが解決しないのは「認識のズレ」が原因!人間関係や転職、メンタルなど|解決のカギは適性検査」
「気分安定」を維持する方法
主治医のアドバイスを実行するのは本当に大変ですし、相当な努力が必要です。
ですが十分、努力に見合った効果があるでしょう。
それでは本題に入ります。
双極性障害の再発防止と気分を安定させる方法は、「生活リズムを崩さず、主治医のアドバイスを継続する」ことです。
がっかりされたかもしれませんが、「生活リズムの維持」は非常に効果的です。
特に気分に波があるメンタル疾患は、生活リズムが乱れると病状が悪化しやすくなる傾向があります。
双極性障害においては、生活リズムが整うと、気分の波の振り幅が小さくなるので安定した生活を送りやすくなるでしょう。
また毎日欠かさず薬を飲み、定期的に主治医からのアドバイスを聞いていれば、大きく体調を崩すまえに持ち直せるようになります。
つまり、安定した生活を送る方法は、「処方された薬は飲む」「生活リズムを整える」「主治医のアドバイスを聞く」となります。
「連続」と「継続」は別物で、数日やらない日があっても、また続けていけば「継続」になります。
終わりに
本記事では、私の体験談をメインに双極性障害やメンタル疾患について解説しました。
双極性障害に限らず、メンタル疾患の治療には年単位の時間がかかります。
私自身、病気について知れば知るほど絶望的な気持ちになることもありました。
つらい時、苦しい時はひたすら耐えるしかなく、「病気を治したい」と思うこと自体、ハードルが高いように思います。
しかしながら、本記事を読んでくださったあなたには、ほんの少しでも気持ちが楽になっていただけたらと思い、記事を書きました。
長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございます。